研究概要 |
ヒト主要組織適合複合体HLAクラスII抗原(DR, DQ, DPの3抗原が知られている)を認識するT抗原レセプターのサブユニットの同定とその分子機構を明らかにすることを目的として, まずDR, DQ, DP各遺伝子を導入したマウスL及びヒトB細胞系形質転換細胞を作成した. これらの各形質転換細胞を刺激源としてリンパ球混合培養をおこないT細胞の増殖誘導活性(MLR)を調べたところ, DQ形質転換細胞に強力なMLR活性を認めることができた. DP形質転換細胞については弱いながらもMLR活性を検出できたが, DPアロ抗原タイプに応じた特異性はみいだすことができなかった. これに対してTリンパ球系細胞にHLA遺伝子を導入した形質転換細胞についてはMLR活性を検出することはできなかった. この事実はマウスL細胞がヒトB細胞系細胞と異なり, T細胞には抗原提示能が欠いていることを明確にしめしている. これに対しDR形質転換細胞は当初MLR活性をみいだすことができなかったが, 受容体細胞(マウスL細胞など)を異なる由来のものを用いるとDR抗原についてもMLR活性を認めることができた. この事実は同じ細胞であっても例えばL細胞, 長期培養により異なる抗原提示能を有する細胞に皮化(皮異)していくことをしめしている. 一方, DP抗原を認識するT細胞クローン(PLTクローン)はDP抗原タイプ特異的にDP形質転換細胞を認識し, 増殖が誘導されることが明らかとなった. 現在これらのPLTクローンのT抗原レセプターのサブユニット(α, β, γ)遺伝子の再構成について検索中である. 以上のようにHLA抗原のすべてのクラスII抗原(DR, DQ, DP)がMLC活性を保有していることはそれぞれの機能を考える上で注目すべき所見といえる. またアイソタイプの異なるα及びβ鎖の組合わせ, DOαとDPβ, DOαとDQβの遺伝子形質転換細胞についてはいまのところ明確なMLC活性はみいだせなかった.
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