研究概要 |
アイソトープ及び蛍光物質でラベルしたインターロイキン1(IL1)を用いて, ヒトT細胞上のインターロイキン1リセプター(IL1R)の発現機構について解析を行い, 以下の結果を得た. (1)ヒト末梢血T細胞は刺激しない状態ではほとんどIL1Rを発現していなかったがコンカナバリンA(ConA)で刺激すると4時間でIL1Rが検出されるようになり, 48時間でピークに達した. (2)アイソトープでラベルしたIL1αのT細胞への吸着はIL1α及びIL1βでは阻害されたが, インターロイキン2, インターフェロンYでは阻害されないことから, IL1RはIL1に特異的であるが, IL1αとIL1βは一つのIL1Rを共有していると考えられた. (3)Scatchard plot解析により, ConAで刺激したT細胞上のIL1Rは細胞あたり約350分子, Kd値は28×10^<-10>Mであった. (4)蛍光物質でラベルしたIL1を用いてフローサイトメトリーで解析すると, ConAで刺激されたT細胞には約30%にIL1R陽性細胞が検出された. (5)T細胞のみをConAで刺激してもIL1Rの発現はみられなかったが, ここに単球を加えるとその数に応じてIL1Rの発現がみられるようになり, T細胞の約10%に単球を加えた時最大のIL1Rの発現がみられた. また, 抗HLA-DR抗体を添加したり, HLA-DR抗原陰性の単球の存在下ではIL1Rの発現はみられなかった. このことから, T細胞上のIL1Rの発現はHLA-DR抗原陽性単球の補助作用が必要であることが示唆された. (6)IL1とConAでT細胞のDNA合成反応を誘導する際にもHLA-DR抗原陽性の単球が必要であった. 以上のことから, T細胞上のIL1Rの発現及びT細胞のIL1に対する反応性はHLA-DR抗原陽性単球により調節されていることが明らかにされた. 現在, 同様の解析をB細胞を用いて行い, また, IL1が細胞に作用した後の細胞内の変化をサイクリックAMPを中心に解析中である.
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