アデノウィルス12型による感染時のクラスI抗原の転写制御機構を明らかにするために、クラスI抗原遺伝子のプロモーター上流域に存在するcis-及びtrans-エレメント及び核内制御因子についての解析をすすめた。マウスクラスI抗原Hー2K^<bm1>及びHー2K^b遺伝子の転写調節に関与するプロモーター上流2Kbの全塩基配列を決定し、アデノウィルス12型EIAによる、正及び負のコントロールエレメントを同定した。負に作用する領域ー1994〜-1051bp間の欠失変異体を使用してプロモーターに及ぼす影響を調べた結果、-1765bp付近に存在するTATA Box様の配列及び、その前後の領域が負の制御に必須である事が示された。これらの領域を細分化したフラグメントを用いて、ゲルシフト法及び、foot print法で核内蛋白質の特異的な結合を調べた結果、複数の因子の共同作用が負の制御に必要である事が示唆された。 現在、再に核内制御蛋白質及びEIA遺伝子産物の結合形成体の確認を行なっている。一方、正に作用するエレメントは、従来まで知られているところのクラスI抗原遺伝子エンハンサー・IFNコンセンサス配列である事が判明した。これらの領域に結合する核内制御因子を検討したところ、正の領域では、アデノウィルスEIAのトランスフォーマントも正常細胞とも変化が認められなかったが、負の領域に差を認めた。これらの蛋白質の分子構造を明らかにし、これらの遺伝子クローニングを通じて遺伝子治療に役立てる方向に研究を進めていき、ウィスル感染の防禦法を確立したい。
|