研究概要 |
1.胸腺キメラマウスを用いた自己寛容に関する研究. S62年度は, BALB/Cヌードマウスに2デオキシグアノシン(dGuo)処置したB10.BR胎仔胸腺を移植した胸腺キメラマウスを作製した. この結果は, その前年度に作製した別の組み合せの胸腺キメラマウス(dGuo処置BALB/C胎仔胸腺をC3Hヌードマウスに移植)の実験結果を再度再現することとなった. すなわち, これらのキメラマウスは, 移植胸腺型のクラスIMHCには免疫寛容が成立していないが, 移植胸腺型のクラスIIMHCには免疫寛容が成立していた. これらのキメラマウスはしばしば弱いMLR反応を胸腺型MHC刺激細胞に対して示すが, 抗CD4抗体による抑制実験の結果, この反応は, クラスII反応性T細胞によって担われていないことが判明した. この結果をJ.Immunologyに投稿中である. 私達の結果は, von BoehmerらやSprentらの胸腺上皮細胞に自己寛容導入能力を認めない立場と相反するが, Le Douarinらのトリ胸腺原基移植実験の結果を支持した. 現在胸腺臓器内で自己寛容に積任をもつ細胞を解析する目的で, 以下に述べる胎仔胸腺臓器培養法で研究をすすめている. 2.胎仔胸腺臓器培養におけるT細胞初期分化の解析が表面マーカーの検索, T細胞機能分化の両面から可能となった. また培養胸腺内のキメリズム作製が可能となり, 自己寛容, 移植免疫寛容の研究が始まり, その一部のデータを昨年の日本免疫学会で報告した. この点での新たな知見は, 胸腺細胞そのものに強いクラスIMHCに対する寛容導入能力があることが判明してきたことである. この知見を強化するために, 現在セルソーターを用いて分取したThy1陽性細胞の寛容導入能を培養胸腺内キメリズムの手法を用いて検討している. 胸腺内におけるT細胞分化とMHC認識の初歩的検討として, 抗Ia抗体, サイクロスポリンのT細胞分化への影響を検討し, この結果をImmunoligyに投稿した.
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