研究概要 |
これまでの研究によって, 交感神経β作用, ACTH等各種ホルモンのSecond Messengerであると認められているPlasma C-AMPは, ACTH,OH,Prolactin Cortisolに比べて, 騒音ストレスに対する敏感な指標であることを明らかにした. しかし騒音ストレス負荷後のC-AMPの上昇度に個人差も大きいことがわかっている. 集団の中からストレスに対して生理的に鋭敏に影響するかどうかを, 簡単なアンケート方式にて分別出来るならば, 影響を受けやすい者への早期の保健指導が可能になる. またSpierberger,C.D.らが作成したSTAI(不安尺度)の中にはA-Trait(性格特性としての不安)とA-State(状態不安)があり, 我々もこれら不安度を種々検討して信頼性, 妥当性ともに良いことを確認している. 今回はまずSTAIのうちのA-Traitのみでストレスに反応し易いか否かの分別が可能かどうか, またNoise群におけるC-AMPやA-Stateの上昇度のストレス指標としての有効性を検討した. まず18〜19才の女子学生にA-Traitのアンケートを試み得点化し, 90dB(A)PINK NOISEを15分間暴露し, 暴露前後のPlasma C-AMP, A-Stateを測定し, ストレス指標としてlog(C-AMP後/前)およびlog(A-Stat後/前)を用い, 騒音負荷のない女子学生をControlとして比較検討した. その結果A:TraitとC-AMPの上昇度には相関がなく, A-Traitだけでは個人をストレスに反応し易いか否かに分別するのは困難であることがわかった. ストレスに対するC-AMPやA-Stateの上昇度の敏感度をみるためにControl群におけるそれぞれの95%ileをクライテリアにした時, Noise群を以上と以下とで分類すると, log(C-AMP後/前)では敏感度0.71と高かったが, log(A-State後/前)では, 0.27と低かった. すなわちストレスに対する生理的指標であるC-AMPの上昇度は心理的指標のA-Stateの上昇度よりも敏感性が高く, より有効性が高いことが考えられる.
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