研究概要 |
パーソナルコンピュータ一式を購入し, 当講座に設置し研究を遂行してきた. 炭素数4から8の脂肪族ケトンのケトン間距離の異なるジケトン化合物, 13個, 及び炭素数3から8の2位にカルボニルを有するモノケトン6個の合計19個の化合物について, 岡崎市の国立分子化学研究所の大型コンピュータに組み込まれているプログラム, ガウス82を用い, ab initio LCAO SCF MO法により, 前述の化合物の最高被占軌道エネルギー, 最低空軌道エネルギー各原子の荷電状態, 総エネルギー, ケトン間距離などを計算した. この計算結果を化合物の神経毒性の強さと比較検討してみると, ケトン間距離の異なるジケトンでは神経毒性と量子化学的パラメータとの間には相関関係は認められなかった. 炭素鎖が異なるケトン間距離がγ位である2.5-ジケトン化合物について検討すると, 最高被占軌道エネルギーと神経毒性の強さとの間には関連性がみられなかったが, 最低空軌道エネルギーと神経毒性との間には良い相関が認められた. このことは, 2.5-ヘキサンジオンの反応する生体側の組織が, 電子受容性を有するものであることを示している. DecaprioやAnthonyらのこれまでの生化学的研究によると2.5-ヘキサンジオンがアミノ基と結合しピロール化合物を形成するといわれており, 今回の量子化学的研究の結果も最低空軌道エネルギーが低く, 生体の蛋白分子のアミノ基, SH基やOH基との結合を示唆しており良く一致するものと思われる.
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