研究概要 |
昭和62年度までの研究により、神経毒物2,5-ヘキサンジオンの電子的特徴は、γ位だけ離れた位置にカルボニル基を2つ有することであり、さらに、最低空軌道エネルギーが低いことであった。このことから、2,5-ヘキサンジオンは生体内の神経蛋白と反応することにより神経毒性が発現するものと考えられた。最低空軌道エネルギーが低いことから、反応の相手は、求核攻撃性を有するアミノ酸残基と推定した。この場合、もっとも考えられる残基は、アミノ基、SH基およびOH基であるのでこれらのいずれとも反応する可能性があるが、一般に化合物の反応は、結合可能な等距離内にある相手とは、結合エネルギーの大きいものと反応すると考えられるので、2,5-ヘキサンジオンとそれぞれのアミノ酸残基との結合エネルギーを計算することを計画した。この場合、アミノ酸残基は、巨大蛋白の部分であるので、アミノ酸残基をモデル化しなければならない。モデル化の例を文献的に検討を行ったが、適当なものが発見できなかった。また、共同研究の主要メンバーである熊江隆助手が海外留学したため、この研究計画は最終結論を得るに至らなかった。 さらに、研究を続行することが必要である。
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