研究概要 |
ヘキサンの代謝産物である2.5-ヘキサンジオンは、ヘキサンの神経毒性の主要原因物質であることが知られている。この2.5-ヘキサジオンの神経毒性の発現機序は、この物質の生体アミンとのピロ-ル生成が関与しているとの報告がある。 今回、量子化学的手法を用いて、2.5-ヘキサンジオンと構造上類似する11種の化合物の神経毒性と反応性との関連性について検討した。 反応性のパラメ-タは、HOMO,LUMO,電子密度並びにケトン間距離が用いられた。 その結果、神経毒性の最も強い3,4-ジメチル2,5-ヘキサンジオンのLUMOが最も低く、その次、2.5-ヘキサンジオンのそれが低く神経毒性の強さとLUMOとの関連性があることが示唆された。従って、これらの神経毒物の電子受容性により神経毒性が発現することが考えられ、反応の相手である生体側は、求核基であることが示唆される。これは、アミノ酸残基とのピロ-ル形成あるいは-SH,-OHグル-プと反応もある得ることを示している。 3,4-ジメチル2,5-ヘキサンジオンのすべての原子の電子密度の計算から3位と4位のメチル基が同じ側にあるならば、この物質は、シス型をとり易いが、反対側に位置しているのであれば、メチル基の水素原子の反発によりトランス型をとり易いであろう。従って、ピロ-ル形成よりも架橋の形成により分子を巨大化させる可能性が強い。
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