農作物栽培起因性の皮膚障害をオクラ栽培作物を例に、1.その発症の様態を現地疫学的に解明する。2.原因物質の究明を農薬の関与を含めて実験的に検討する。3.予防対策の樹立を目的として本研究を行なった。その結果:1.鹿児島県南薩地方のオクラ栽培者について、2年度にわたり行った現地調査によると、オクラ栽培に伴う皮膚障害の発生はかなり高率であり、適切な予防措置を講じない場合にはほぼ全員に発症する。症状は掻痒・発赤を主とし発症部位は、袋詰作業ではほぼ指先に限局されるのに対し、収穫作業や管理作業では手指のほか手腕、顔面など皮膚の露出部位に生じやすい。この皮膚障害の発生は気象条件とも密接な関係があり、雨天、朝露がある時、あるいは発汗の多い時におこりやすい。同時に実施したアレルギー学的検査では、約1割り程度の者にオクラ成分に対する皮膚過敏症の存することが明らかになった。またオクラによる即時型アレルギー発症の可能性も否定できないことがわかった。2.オクラ成分および使用農薬の向皮膚作用を、モルモットを用いて実験的に検討した結果、オクラ成分には一次刺激性が認められたものの、感作性、光毒性を認めるには至らなかった。また、DDVP、Chlorothalonilに、中程度の光感作性が認められた。これらの結果は、疫学調査結果や文献との不一致の部分もあり、実験方法も含めさらに検討が必要である。3.以上より、オクラによる皮膚障害は発症機序からみると主として(1)オクラとの大量接触による機械的刺激作用、(2)オクラ成分などによる一次刺激作用、(3)オクラ成分によるアレルギー性に大別できる。その予防対策として、オクラとの接触を防ぎかつ作業性を考慮した保護具の検討、および作業中の樹葉との接触を最少限に保つ適正な畔幅の検討などについて考慮した。
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