指趾の形成障害が高頻度に誘発される化学物質投与条件を採用し、次いでアクリジン・オレンジ(AO)で生体染色をし蛍光顕微鏡を用い発生異常発現過程の観察をした。方法:妊娠9日の母獣にマイトマイシン4mg/kgを腹腔内に、カフェイン50mg/kg皮下に同時投与し実験群とした。また、生理食塩水投与の対照群をもって比較に供した。次いで実験群と対照群共に(1)妊娠10日にAO40mg/kgを母獣尾静脈より投与し1時間後および27時間後に胚を摘出し蛍光顕微鏡を用いて両者の二次蛍光につき比較検討した。(2)妊娠11日にもAOを投与し1時間後に胚を摘出し同様に観察した。結果:対照群で(1)妊娠10日AO投与1時間後では胚の全身にAOによる緑色の二次蛍光が均一に認められ、肢芽では頂堤が明瞭に識別された。AO投与27時間後では全身・肢芽ともに自家蛍光のみでAOによる二次蛍光は認められなかった。(2)妊娠11日AO投与1時間後では肢芽の間葉組織細胞による指放射形成が観察された。他方、実験群では(1)妊娠10日AO投与1時間後には胚全手の緑色の二次蛍光を背景に、体表面に黄色蛍光を放つ顆粒状細胞群がび漫性に散在した。肢芽では、間葉組織に強い黄色の二次蛍光を放つ顆粒状の細胞群が集積して存在した。またAO投与27時間後でも全身に二次蛍光が認められ、局所的には前脳部表面に二次蛍光を放つ顆粒状の細胞群が散在し、肢芽では前後肢共に(特に後肢で)二次蛍光の存在が明らかであった。(2)妊娠11日AO投与1時間後では前脳部に黄色の二次蛍光を放つ細胞群の存在がより明らかであり、前肢後肢共に間葉組織には強い黄色の二次蛍光を放つ顆粒状の細胞群がび漫性に存在し、肢放射形成は認められなかった。結語:以上の結果は、壊死とその修復過程を蛍光の色と強さによって識別しえたもので、発生異常を予知させる変化として位置づけることができる。
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