マウスの器官形成期に母獣にアクリジン・オレンジ (AO) を投与し、胚への移行・分布どうたい観察し器官形成期胚の正常の形態形成過程ならびに異常の発現過程について検討した。 I.AO40mg/kgを無処置の妊娠7〜11日マウスの尾静脈より投与し、その後経時的に胚を採取しAOの移行について蛍光顕微鏡により観察した。その結果、 (1) 5分後の胚ですでにAOによる二次蛍光が認められ、次第にその強さが増し、24時間後も明かであったが、48時間後の胚ではすでに自家蛍光のみで二次蛍光は認められなかった。 (2) 杯の形態形成過程が緑色-黄色の二次蛍光の色調・強度によって鮮明に識別観察されえた。たとえば神経口閉鎖にともなう生理的細胞壊死と関連する黄色の二次蛍光を放つ細胞群が局在的に観察された。II.肢芽形成障害を高頻度に誘発する化学物質を妊娠9日に投与の実験群と生理食塩水投与の対照群を構成した。両群とも妊娠10日にAOを投与し1時間後に胚を摘出し二次蛍光につき両群を比較検討した。その結果、 (1) 実験群では対照群に較べAOによる二次蛍光がより長く存続した。胚の全身に強い黄色蛍光を放つ顆粒状細胞群がび漫性に散在するのが認められ、とくに肢芽では間葉組織に同様の顆粒状細胞群が密度濃く存在した。 (2) 実験群の妊娠11日にAO投与1時間後の観察では前脳部表面に同様の顆粒状の細胞群の散在がより明かに示され、また、前・後肢芽では肢放射形成は認められず間葉組織は無構造で強い黄色二次蛍光を放っていた。 結後:以上の観察結果により、AO生体染色による蛍光顕微鏡法が、胚の正常形態形成ならびに異常の発現過程の観察に有用な手段であることを示し得た。
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