研究概要 |
環境カドミウム(Cd)が骨粗しょう化に及ぼす影響を明らかにする目的で研究を進めている. 骨粗しょう化度をMicrodensitometerとcomputerを用いるMD法により, Cd汚染地住民, 男91人, 女112人, 非汚染地住民, 男25人, 女55人について測定した. いずれも50才以上の住民である. Cd汚染者, 非汚染者の両者については, 尿中Cd, B_2-ミクログロブリン(B_2-m), 血清クレアチニン(S-Cr), カルシウム(S-Ca), 血清無機リン(S-P), 血液中Cdを測定した. MD法で得られた骨粗しょう化度を示す各指標を目的変数とし, 血清, 尿所見を説明変数として, 重回帰分析を行った. Fin=2, Fout=2とした, 変数増減法により選択された項目は, 非汚染者の男ではいずれの所見とも有意の関連を示さなかったが, 女では年令との関係が有意であった. 一方Cd汚染者では, 男は尿中B_2-m, S-Crとは強く, 年令, 及びS-Caとは弱い関連のあること, 女では, 年令及び尿中B_2-mと関連の強いことが明らかとなった. Cd汚染地住民だけについて, 腎機能に関連する血液, 尿検査項目を追加し, 同様に重回帰分析を行った. 追加した検査項目は, 尿中α_1-ミクログロブリン(α1-m), 血清α_1-m, クレアチニンクリアランス(Ccr), Caクリアランス, リンクリアランス, %TRP, B_2-mクリアランス, α_1-mクリアランス, Base Excessである. 男では尿中B_2-m, 血清B_2-m, S-Crの関連が認められる一方で年令との関係は除去された. 女では, 年令, 尿中B_2-m, 尿中α_1-mが選択され関連の強いことが示された. これらの成績は, Cd汚染者の骨粗しょう化度は年令に加えて尿B_2-m排泄増加に見られる腎障害との関連が強いことを示していると考えられた. 現在Cd汚染者, 非汚染者について, 血清中1α,25(OH)_2, 副甲状腺ホルモン, オステオカルシンの測定を終了し, 統計的解析を行っている.
|