母親となる雌マウスへのDCDFsの投与量を求めるために成熟マウスの免疫応答能に及ぼすDCDFsの影響を検討したところ、母親となる雌マウスへの投与量は各回1μg総計5μg以下が望ましいことがわかった。そこで母親となる雌マウスへのPCDFsの投与は (1) 1μgを週2回総計5μg投与する群 (2) 0.1μgを週2回総計5回投与する群 (3) オリーブ油のみを投与する対称群の3群とした。仔の液性免疫系に及ぼす影響を解析するためTB両細胞の機能を個別に検討した。IgM抗体産生に関わるB細胞の機能はDCDFsの影響の最も強く現れると考えられる胎仔期・乳仔期暴露群で5μgを投与した母の仔マウスでも0.5μgを投与した母の仔マウスでも影響はみられなかった。IgG投体産生に関わるB細胞の5μgを投与した母の仔マウスでも0.5μgを投与した母の仔マウスでも胎仔期・乳仔期暴露群でともに抗体産生能が軽度に抑制されていた。一方生後に母乳中のPCDFsを摂取し始める乳仔期暴露群では0.5μgを投与した母の母乳で育った仔マウスのB細胞機能に影響がみられないことから母乳中PCDFsの影響は軽微であろうと思われた。IgG抗体産生に関わるT細胞の機能については乳仔期暴露群では0.5μgを投与した母の母乳で育った仔マウスのT細胞に影響がみられないことから母乳中PCDFsの影響は少ないものと思われた。一方胎仔期・乳仔期暴露群では0.5μgを投与した母の仔マウスでも5μgを投与した母の仔マウスでも抗体産生細胞数が対照群の50%以下に抑制されており、免疫系の発生、分化の過程にある時期のPCDFs暴露と影響が大きいことが示された。細胞性免疫系に及ぼす影響を接触性アレルギー反応で調べたところ胎仔期・乳仔期暴露群で5μgを投与した母の仔マウスで軽度の抑制がみられた以外は対照群との間に差はみられず母親由来PCDFsが細胞性免疫系に及ぼす影響は小さいものと考えられた。
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