研究概要 |
1.今年度に行った研究は, (1)東京近郊農村地区(埼玉県川里村), 離島の農漁村地区(愛知県佐久島)の居住者を対象とした肥満に関する聞き取り調査, 皮脂厚の測定, 血清脂質測定のための血液採取(2)すでに収集ずみの愛知県佐久島の戸籍資料を用いての家系図作成, の二点である. 2.聞き取り調査の際に用いた質問紙の内容は, (1)自己の肥満評価, (2)身長・体重の経年推移, (3)疫病を中心とする身体状況, (4)飲酒, 喫煙, 嗜好, 運動, 仕事などに関する生活状況, である. 3.調査の実施にあたっては両地区とも保健所の協力を得て行った. なお当初の研究計画では上記二地区において食物摂取状況と食習慣に関する調査を行う予定であったが, 調査に多くの時間と労力が必要なことが判明したため質問表作成と調査の実施はすべて次年度に行うこととした. 4.質問紙より得られた情報は, 個人のライフサイクルと肥満度の推移との関連を軸に現在整理・分析中である. また血清脂質の分析は総コレステロール, 中性脂肪, HDLが終了し, アポリポ蛋白は準備が整い次第着手する予定である. 5.家系図から島内居住者の血縁関係が明らかになりつつあり, さらに近交係数など集団遺伝学上の諸指標が算出できる. 家系図を作成した最大の目的は, 血清脂質の近親・同胞者間の分布を遺伝要因から検討する上での基礎的な情報とするためである. 6.肥満に関する身体計測のなかで, とくにウエストとヒップの測定を行った. ウエストとヒップの比が1をこえると各種代謝性疾患を併発する危険が高まるという報告があり, 簡便な指標としての有効性について今後検討する予定である. また肥満の自己評価に対する加齢とライフイベント(転職など)の影響についても注目する.
|