1.前年度に引き続いて(1)離島の農漁村地区(愛知県佐久島)の居住者を対象とした肥満に関する聞き取り調査、皮脂厚の測定、血清脂質測定のための血液採取、(2)事務職者についての健康診断および人間ドックデータの収集、を行った。収集資料の内容として(1)自己の肥満評価、(2)身長、体重の経年推移、(3)疾病を中心とする身体状況、(4)飲酒、喫煙、嗜好、運動などの生活状況、である。なお佐久島調査については、上記のほか(1)高齢者の精神的健康度を知るため、質問紙を用いて抑うつ症状の有無に関する調査、(2)高齢者のライフイベント、とくに島外居住歴について、聞き取り調査による資料収集を行なった。 2.佐久島の実地調査にあたっては、保健所の協力を得て行なった。また総コレステロール、中性脂肪、HDL、アポリポ蛋白をはじめとする血液検査は、昭和大学医学部臨床病理学教室の協力を得て行なった。なお当初予定していた食物摂取状況と食習慣に関する調査は現地との折衝が難航し、研究期間内に実施することはできなかった。 3.質問紙より得られた情報は、自己の肥満評価を既存の肥満指標(BMI)、疾法などの身体状況、仕事など生活状況と組み合わせて検討した。その結果、自己の肥満評価はBMIと大幅な食い違いは生じないが、高齢者において漁業など労働強度の高い仕事に従事している場合には、自己の肥満を過小評価する傾向にある。 4.高齢者の島外居住歴に関する調査結果では、15ー19歳時に島外に移動した経験をもつ者が多い。また将来は島内に住むことを希望する者が大半であるが、健康上の問題は居住地を左右する重要な因子である。高齢者の抑うつ症状の有症率は16%と既存の報告と矛盾しない結果が得られた。また自覚症状数が多いとき、または年齢が高いときに抑うつ的である傾向が認められた。
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