磁場曝露によるSCEおよび染色体異常の誘発性に関しては、8kGまでの磁場強度では有意差は認められなかった。細胞分裂動態も曝露群と非曝露群との間に差はみられず、磁場が強いほど分裂が遅延するという傾向は認められなかった。 磁場とEMSを複合させた場合、EMSを添加した場合濃度が高くなるにつれてSCE頻度の増加が認められたが磁場曝露の有無による有意差は認められなかった。 X線と磁場が複合した場合の細胞遺伝学的検討では次のような結果が得られた。 【○!1】磁場のみを曝露した実験の結果では染色体異常の誘発は認められなかった。X線単独およびX線と磁場を複合して曝露した場合の染色体異常発生率は、最も高い400radの群で磁場とX線を複合させた群で4例中2例に有意に高い発生率が認められたが他の2例では有意差はなく、全例についての平均では差は認められなかった。 【○!2】ダウン症由来培養リンパ球を用いた実験でもX線の線量が高くなるにつれて磁場との複合曝露群で染色体異常発生率が高くなる傾向がみられたが、健常成人由来のリンパ球の場合と同じように個体差がみられた。 【○!3】X線単独曝露およびX線照射後に磁場を曝露した場合の染色体異常発生率は、X線単独曝露群では0.133±0.054(平均値±標準偏差)、X線曝露後に磁場を曝露させた場合には3時間群が0.237±0.033、6時間群が0.230±0.022となり、X線曝露後に磁場を曝露させた場合に染色体異常の発生率が高い傾向が認められたが有意差は認められなかった。また磁場曝露の時間(3時間、6時間)による影響は認められなかった。
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