1 研究目的 昨年度の検討に基づいて、多数例における全身寒冷負荷検査と年齢マッチングした振動障害患者と健常対照者に対するTRH負荷検査を実施し、振動障害者の視床下部-下垂体-甲状腺機能について検討した。また、自律神経機能検査として、安静時および深呼吸負荷時の心電図R-R間隔の変動、全身寒冷負荷時の血漿中cyclic AMPとcyclic GMPの変動を測定しあわせて評価した。 2 研究方法 (1)レイノー症状を有する振動障害者70名、レイノー症状を有しない振動障害者70名、健常対照者70名を対象とし、25℃の部屋で30分安静を保たせた後、7℃の部屋に30分間滞在させ全身寒冷負荷をおこなった。安静25分目および寒冷負荷25分目に留置していた点滴針より採血し血漿は-70℃に凍結保存した。 (2)レイノー症状を有する振動障害患者10名、年齢をマッチさせた健常対照者10名を対象に、朝食摂取後に安静臥位をとらせ前腕皮下静脈に生理食塩水、留置針で血管確保しながらTRH500μgを注入し、負荷前と負荷後30、60、120、180分に採血を行なった。 3 成績 振動障害者では安静時において自律神経系、特に副交感神経系の活動性が低下し、甲状腺機能も低下の傾向にあること、また、全身寒冷負に対する自律神経系、甲状腺系の反応は健常対照者よりも亢進していることが明らかとなった。しかし、TRH負荷検査による血漿TSH、プロラクチンの反応は振動障害者でやや遅延の傾向にあったものの、健常対照者との差は小さく、振動障害者における視床下部機能の特徴についてはなお検討を続ける必要があると考えられた。
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