研究概要 |
小児の悪性腫瘍のリスク要因の一つとして, 患児の両親の受精前から出生までの職業的な有害物質暴露歴, 磁場, 電離放射線などの被爆歴に注目し, 小児ガン登録を基礎としたケース・コントロール研究を行うことを目的として研究を開始した. まず, これまで北海道内で登録された小児ガン1,676例(男888例, 女793例)のケースについて登録票から, 世帯主の職業を総理府統計局の分類に基づき記述疫学的に集計した. 急性リンパ白血病では, 事務従事者(男児24.3%, 女児24.6%), 技能工・生産工程従事者(9.9%, 14.1%), 専門的技術者(10.5%, 12.7%), 農林業従事者(7.7%, 5.6%), 運輸通信従事者(7.7%, 3.5%), 急性骨髄性白血病では, 事務従事者(男児15.3%, 17.4%), 技能工・生産工程従事者(15.3%, 11.6%), 専門職・技術者(9.4%, 10.5%), 農林業従事者(10.6%, 5.8%), 運輸通信従事者(8.2%, 8.1%)であった. 又, 脳腫瘍では, 事務従事者(男児12.7%, 女児15.8%), 技能生産工程従事者(7.3%, 6.0%), 専門的技術者(13.3%, 13.5%), 農林業従事者(4.2%, 15.2%), 運輸通信従事者(1.5%, 9.1%)であった. 登録例では発病時の世帯主の職業しか調べられておらず, 職業が不明の者かそれぞれ(29.4%, 29.0%, 48.9%)もあり, 本結果から一定の傾向を見出すのは難しい. リスク要因となる化学物質や物理環境のそれぞれを個々に両親の職業歴から評価するMarrisonらの職業と発ガン物質・要因の暴露に関する電算コードクロスリンケージシステムによるデータベースを, ケースコントロール研究では使用することとし, コード変換作業を行った. 諸外国でこれまで発表された職業と小児ガンの発生要因に関する疫学研究を文献的に考察し, 総説としてまとめたが, 家庭内における殺虫剤やシンナーなど化学物質への暴露も無視できないことが予想されたため, それらを考慮した調査票を作成した. 現在国立札幌病院の白血病の症例から, 症例対照研究を進めている.
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