研究概要 |
アルコール離脱期におけるテトラヒドロイソキノリンの動態を調べるため酩酊状態で入院した男性アルコール症者(平均46.4歳)30例について入院時に採血及び採尿を行った. 第2, 第3, 第4および第7病日の早朝尿をとった. 対照として平均23.4歳の健常人男子(若年群)31例, および53.8歳の健常人男子(年長群)9例の早朝尿をとった. 1.テトラヒドロイソキノリンの尿中排泄量について, 健常人では年長群が若年群よりもやや高い値を示したが有意差はなかった. 健常人40例の平均値±SDは2.8±2.6ng/mgクレアチニンであり, アルコール症者のうち入院時に健常人の平均値+3SD(10.6)を越える値を示す14例をA群, 範囲内に入る16例をB群とした. A群のテトラヒドロイソキノリンの平均値は51.9±40.8ng/mgクレアチニン, B群の平均値は3.9±1.9ng/mgクレアチニンでありA群の方がB群よりも有意に高かった. A群では第2病日に急激に減少し, 第3病日では健常人の値にまで低下するが, 第7病日に再び高い値を示す例が14例中4例あった. B群では第2病日に急激に減少し以後は健常人の値と差はなかった. 2.入院時の平均血中エタノール濃度はA群では1.98±1.01mg/ml, B群では2.75±1.01mg/mlであり両群間に有意差はなかった. 3.アルコール離脱期におけるドパミンの尿中排泄量についてはA群では第1病日値が最も高く, かつ, B群との間に有意差があった. 両群とも第2病日以降あまり変化がなかった. ノルエピネフリンおよびエピネフリンもドパミンと同様の傾向を示した. 4.肝機能検査値(GOT, GPTおよびγ-GTP)のいずれも両群間に有意差は見られなかった. 入院時の血圧は, 収縮期および拡張期ともに両群間に有意差はなかった.
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