研究概要 |
近年の大麻乱用の急増に鑑み, ムービングプレカラム付属キャピラリーGC/ECD分析による大麻成分の検出法を検討した. 大麻の主成分であるΔ^9-テトラヒドロカンナビノール(Δ^9-THC)は, 島根県産の大麻草から抽出したものを精製した. また, p, p′-DDTを内部標準として用いた. 血液, 唾液からの抽出は, n-ヘキサン抽出後濃縮し, 希カセイソーダおよび塩酸で洗浄して溶媒を留去. ペンタフルオロプロピオン産(PFP)誘導体としてGCに注入した. ガスクロ条件:バックフラッシュ時間1分, カラム:SE-52, 0, 24mm×25m, 温度:160°C→250°C, 16°C/分. この条件下で, Δ^9-TNC-PFPが14分, 内部標準が17.5分. 検量線は, 5-200ng/mlの範囲で相関係数0.996と良好だった. 最小検出濃度は, 唾液の場合で1ng/ml. 次に, ダブシル(DBS)誘導体化の検討において, 生体資料においてもHPLC分析(カラム;ゾルバックスODS, 7.6mm×25cm, 移動相;アセトニトリル:水=75:25, 流速;2.0ml/分. 検出器;UV, 280nm)で14分に検出した. なお, 最小感度は1ngで, ECD/GCに匹敵した. また, Δ^9-THC-PFP誘導体がハロゲンを有することから, より高感度分析が期待できるネガティブCIマウス分析を試みたが, 所有するGC/MSがコンバージョンダイノードを装着していないため, その感度はECD/GC分析とほぼ同程度であった. 8名のモデルたばこ喫煙実験者のECD/GCによる唾液中でΔ^9-THCの測定値は, 喫煙後1時間値で58.3-250ng/ml, 2時間値で79.5-156.3ng/ml, 4時間値でも34.1-74.1ng/mlで採取した資料全例から検出し得た. 以上のことから大麻の主成分Δ^9-THCのPFP誘導体はECD/GCの, またDBS誘導体はHPLC分析において, ともに高感度分析が行えることから大麻の乱用者における乱用行為の証明に有用であると考えられる.
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