研究概要 |
本研究はdot ELISA法により血痕から各種抗原を検出し, 個人識別上有用な情報を得ることを目的としている. dot ELISA法の概様は以下のごとくである. 被検血痕抽出液の極く微量をニトロセルロース膜にドット状に吸着させ, これを固相抗原とし, これに一次抗体, ビオチン化二次抗体, ストレプトアビジンーペルオキシダーゼ結合体, さらにペルオキシダーゼ発色基質を反応させ, 発色の程度により目的とする抗原の有無を定性的に検出する. この方法を応用して現在までに下記のような成績が得られている. 1.成人血痕と胎嬰児血痕の鑑別法に関しては, 抗ヒトAFP及び抗ヒトIgAモノクローナル抗体を使用したdot ELISAによって同一の血痕からAFP及びIgAを並行して検出することにより, 極く微量の血痕(木綿糸2mm付着血痕)から付着後1年を経ても両者の鑑別が可能であった(成人血痕ではIgA+,AFP-,一方胎嬰児血痕ではIgA-,AFP+). また本法により血中AFP量が増加する病的成人血と胎嬰児血との鑑別も可能であることが明らかとなった(胎嬰児血IgA-,AFP+;病的成人血IgA+,AFP+or-). 2.抗ヒトアルブミン・モノクローナル抗体を用いたdot ELISAによる人獣鑑別法を試みた結果, 本法によりヒト血液の約100万倍希釈までヒトアルブミンの検出が可能であった. 本法の特異性に関しては, チンパンジー及びニホンザルでは交差反応を認めたが, 新世界ザルの一種アカハラタマリン及びその他のホ乳類, 鳥類の血液に対しては交差反応を認めなかった. 今後各種血痕につき検討する予定である. 3.dot ELISAによるABO式血液型判定及び妊婦血痕証明に関しては, 現在基礎的実験を行っており, 今後検査法を確立し, 各種血痕試料について検討する予定である.
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