研究概要 |
自動車事故の"詐病患者"はかなりの数に達しているものと推定され, 昭和61年度の被害総額は, 警察庁の集計によると, 判明しただけでも20億円に達している. 一方, 人身事故の認定は, 医師の診断書と警察の事故証明によってなされており, "詐病の究明"には, 医師の診断根拠ならびに事故内容について, 個別にかつ総合的に検討を加える必要がある. そこで, 本研究では, いわゆる"鞭打ち症"の実態とその発生要因を明らかにすることを目的として, 全国医学的の整形外科学教授および栃木県下の開業医(整形外科および外科医)を対象として, 選択方式のアンケート調査を実施した. アンケートの回答項目は約20で行った. 整形外科学教授に対する発送数は112通, 回収数は75通(回収率:67.0%)であり, 開業医対象の回収数は85通であった. 教授の回答のうち, 主要なものを要約すると, 次のようになる. (1)最近の鞭打ち患者数は(減少:58.6%, 増加:4.0%, 不変:14.6%, 不明:17.3%), (2)多い事故形態は(後方からの衝突:65.3%, 不定:25.3%, 側方からの衝突:10.6%), (3)警察への事故内容の問合せは(不履行:82.6%, ときどき:5.3%, 毎回はしない:4.0%), (4)診断根拠は(総合的に:56.0%, 自覚症と他覚所見の推移:29.3%, 他覚所見の推移:5.3%, …:事故内容:0%), (5)詐病らしい患者の診断経験は(ある:76.0%, ない:12.0%, 不明:6.6%), (6)詐病を見被る策は(ある:40.0%, 不明:32.0%, ない:14.6%), (7)専門分野は(脊椎以外の骨・関節疾患:44.0%, 脊椎外科一般:41.3%, その他重複:26.6%, 頸椎外傷:10.6%……). 今後, 収集資料について個別的かつ総合的に検討・考察を加える.
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