研究概要 |
前年度までの研究で、「面積測定定量血球凝集反応」を解離試験に応用し、血痕、唾液斑、毛髪、爪、ホルマリン固定臓器などの法医学的試料からのABO式、MN式、Rh式およびLewis式などの判定を試みた。今年度はとくに斑痕検査において重要な意義をもつLewis式を唾液、尿などの斑痕から検出を試みた。 1.唾液をマイクロタイタ-プレ-トの表面に吸着させて解離試験を行ない、ABO式各型の唾液65例〔Le(a+b-)31例、Le(a-b+)29例、Le(a-b-)5例〕を検査したところ、全例のLewis式の判定が可能であった。この検査法の検出限界はLe^a抗原で5,120倍〜10,240倍、Le^b抗原は10,240〜20,480倍(いずれも唾液希釈倍数で表現)であった。 2.唾液を付着させた紙片からの抽出液をマイクロタイタ-プレ-トに吸着させる手技では、比較的新鮮な唾液が付着した0.5×0.5cm大の濾紙片(唾液量3μlに相当)からLe^aまたはLe^b抗原を検出できた。 3.尿50μlを用い、マイクロタイタ-プレ-ト表面に吸着させた後に解離試験を行なったところ、18例中17例のLewis式血液型を判定できた。 4.尿付着濾紙片1×2cm(尿量10μlに相当)に直接にモノクロン抗体を作用させて解離試験を行なったところ、18例中17例のLewis式を誤りなく判定できた。残りの1例はLe(a-b-)であり、斑痕に付着している血液型物質量が少ないためにLewis式の判定は難しかった。 以上のように、解離試験の成績を定量血球凝集反応で判定する方法は、きわめて鋭敏で、従来の方法では不可能であった尿斑からのLewis式判定も可能にするなどの長所を発揮した。
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