研究概要 |
血液多型性形質の特徴は, 親から子に規則正しく遺伝することと, 遺伝子の頻度に関して民族ごとに変異が見られ, 遺伝子勾配を示すことである. このような意味で血液多型性形質は民族の特徴づけや移動の跡づけに有用な遺伝標識として用いられている. 昭和62年度においては, 我々は中国諸地域在住の漢民族について, 血清型の中, ビタミンD結合タンパクとして知られるGC型遺伝子の分布について調査研究を行ってきた. 昭和63年度においてはこれを更に中国在住の少数民族についてその調査研究を拡げることを企てている. 検査を行った漢民族ではハルビン, 長春, 大連, 昆山, 西安, 成都, 長沙, 貴陽など計1494名の血清資料について次の成績を得た. 1F遺伝子ではその頻度は0.4531(西安)〜0.3757(成都)の間に, IS遺伝子ではその頻度は0.3054(貴陽)〜0.2024(長春)の間に, 2遺伝子ではその頻度は0.3879(昆山)〜0.2483(貴陽)の間にある. 変異型はハルビン0.0232, 長春0.0417, 大連0.0287, 昆山0.0111, 西安0.0125, 成都0.0169, 長沙0.0269, 貴陽0.0101の頻度でみられる. その中で多くみられるのは1A3と1A2である. 日本人集団では1F型0.4209, IS型0.3006, 2型0.2579, 変異型0.0206であって, 今回検査した漢民族の値の中におさまる. ネグリトや日本人集団で見い出された変異型:1A2型はハルビン, 昆山, 長沙などの集団でも見い出されている.
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