研究概要 |
1.autocrine系の存在:家兎胸部大動脈中膜より培養した中膜平滑筋細胞(SMC)は継代2, 3代目ではSMCに対する増殖刺激活性(autocrine系)を分泌しなかったが, 4代目以后に強い増殖刺激活性の分泌がみられた. 一方, バルンカテーテル法, カニューレ留置法, 高コレステロール食飼育によって作成した動脈硬化巣内膜より培養した内膜SMCは培養初期より増殖刺激活性を分泌した. この因子を平滑筋細胞由来増殖因子(SDGF)と命名した. 2.SDGFの標的細胞:SDGFは家兎SMC, ラットSMC, ヒト線維芽細胞に増殖刺激活性を示したが, 〓帯静脈内皮細胞には示さなかった. 3.SDGFの物理化学的性質:(1)非透析性, (2)トリプシン感受性, (3)熱(100゜C, 10分)に不安定, (4)酸性で安定, (5)還元に不安定, (6)分子量はSephadexG-75によるクロマトグラフィ上8700, (7)等電点はおよそ4.2と5.9. 4.既知の増殖因子との関係:(1)抗PDGF抗体でSDGFの活性は抑制されず, ^<125>I-PDGFの受容体への結合はSDGFで拮抗されなかった. 即ち, SDGFはPDGFと免疫学的にも, 受容体に於ても異なることが証明された. (2)ソアトメジンC(SoC)とはラジオイムノアッセイで交差しなかった. (3)PDGF, FGF, EGF, SoCと共同して増殖刺激活性を示した. (4)インターロイキンー1(IL-1)や腫瘍壊死因子(TNF)はSMCの増殖刺激活性を持たず, SDGFとの共同作用も見られなかった. 以上の結果と, 標的細胞, 物理化学的性質などに関する知見を総合すると, SDGFはPDGF, FGF, EGF, SoC, IL-1, TNFなど, 動脈硬化症に関与する細胞群の分泌し得る既知の因子とは異なると考えられた. 5.SDGFの精製:DEAE-SephadexA-50, SephadexG-75, アンフオラインを用いた等電点電気泳動法などによる精製が進行中である.
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