全身性エリテマトーデス(SLE)患者血清中には多彩な自己抗体が出現する。これらの自己抗体の特異性を詳細に解析することは、難治な本病の病態を解析する上で最も重要な課題である。なかでも抗DNA抗体は、本症の予後を左右する腎症や血管炎の形成に関与する重要な自己抗体を考えられている。しかし、患者血清中には様々な自己抗体が含まれているため、詳細な特異性の解析には困難がつきまとう。その様な難点をモノクローナル抗体作製のテクノロジーが解決してくれた。本研究者は、SLEのモデルマウスの脾細胞を用いたB細胞融合により数十種類のモノクローナル抗DNA抗体産生ハイブリドーマ株を樹立し、その特異性を解析してきた。この研究を通して得られた最も重要な新知見のひとつは、抗DNA抗体が多様な抗原に対して交差反応性を有するということであり、この様な特性は、抗DNA抗体の産生が、当該抗原DNAの存在なしにも、他の多種の自己抗原の刺激により、自己抗体を恒常的に産生しうることを示唆している。本研究者は、モノクローナル抗DNA抗体を用いた抗体の特異性の解析により当該研究期間に以下の点を明らかにし、それらの一部はすでに論文として報告した。 【○!1】モノクローナル抗ss/dsDNA抗体は、DNAのみならずRNA、プロテオグリカン、リン脂質(特にカルジオリピン)、免疫グロブリン等に対して多様な交差反応性を有する。 【○!2】モノクローナル抗ss/dsDNA抗体の大部分は補体第一成分であるC1qに反応性を有し、これは従来からSLE患者血清中に認められてきたC1q-precipitinと同一の特異性と考えられた。 【○!3】モノクローナル抗ss/dsDNA抗体は、株化(腫瘍化)リンパ球や活性化リンパ球に対して反応性を有し、いわゆる抗リンパ球抗体活性を有する。
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