我々は、多発性関節不全症の患者腫瘤から線維性腫瘍を切除し、その一部を細片とし、これをヌードマウスの皮下に注入しガン組織の転移を試みた。二ヶ月後肥厚したマウス皮膚を剥離し、これよりペプシンによりコラーゲンを抽出した。得られたコラーゲンを塩分画によりコラーゲンの分子種を分別定量した。その結果、ヌードマウス皮膚には線維種の保持する短鎖内膜コラーゲンVI型が存在することを知った。またこの短鎖コラーゲンで免疫したウサギ抗血清を用いて反応させたところ、タイプVIコラーゲン抗体と反応するバンドが55kdの部位に存在することを証明することができた。この短鎖コラーゲンはヒト先天性疾患マルファン氏病の上行性大動脈壁を抽出して得たコラーゲンに対してもタイプVIコラーゲン抗血清が反応した。このように短鎖コラーゲンは現在まで知られていなかった組織にかなり広範に存在することが推定される。のみならず、タイプIコラーゲンの分布範囲に広く普遍的に存在し、I型とその平衡的存在を示している可能性が高い。関節形成不全症においてもタイプIコラーゲン量よりこの短鎖VIコラーゲン量が多かったという成績はI型の共存および生成に必要な随伴性コラーゲンである可能性が高い。さらに、この腫溜より細胞を分離し細胞のクローン化を試みた。その血清中にはタイプVIコラーゲンが高密度に存在していることをSDS電気泳動で証明することができた。一方、プロテオグリカン構成体であるムコ多糖について高速液体クロマトグラフィーを用いng台で30分以内に12種の分子種を分別することができた。これに新しくコンドロイチナーゼB及び20スルファターゼを用いコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸の構造をより正確に把握することに成功した。その構造二糖レベルでの分別は異型性に富む炎症修復、線維化過程における細胞間マトリックスの構造変動をより的確に把握する研究に極めて有効であると考えられる。
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