研究概要 |
1.実験腎炎作成に関しては当初はpurowycinによる腎炎作成を予定していたが, 腎炎の発症が一定でなかった. このため牛血清アルブミン静注による血清病型腎炎の作成を試み, 安定した腎炎の発症を見たので, このモデルを使用することとした. メサンギウム細胞の細胞培養は安定しており, 増殖能の判定も顕微鏡下に定量的に可能であった. さらに増殖能判定の正確を期すために^3H-thymidine uptakeを行う予定であったが, アイソトープ室の実験室スペースの問題で昭和63年度に行うこととした. アルブミン静注による腎炎モデルより得られたメサンギウム細胞の増殖率は対照群と比して有意に増加していることが認められた. またメサンギウム細胞の増殖能の1つの指識と考えられる培養糸球体の底面への付着率も腎炎モデルで上昇していることが認められた. 2.微小電極法に関しては, 微小電極が哺乳類の腎細胞に適応できることを確めるために, 腎尿細管上皮(ウサギ近位尿細管)の細胞で検討を行った. この結果細胞内PH, Na, Cl, Kの測定が可能であることが明らかになり, この技術を使用していくつかの重要な知見が得られた. (1)近位尿細管血管側膜にNa-HCO_3共輸送が存在する. (2)同部にK-Cl共輸送が存在する. (3)同部にNa-HCO_3/Cl交換輸送が存在する. (2)近位尿細管でのCl輸送は能動輸送である. これらは各々論文として発表した. 3.培養メサンギウム細胞に微小イオン選択性電極を刺入する実験は既に試みているが, 細胞が小さく, また刺入にあたって細胞が収縮することより, 未だ再現性のよいデータは得られていない. 今後さらに電極を細くする, 脱カルシウムの条件下で収縮を抑制するなどの検討を行って測定の精度を上げる予定である.
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