1.実験腎炎の作成はウサギで行った。5mgのウシ血清アルブミン(BSA)とFreund's adjuvantで感作したウサギにBSA計750mg静注し腎炎き発症が認められた。腎よりメッシュ法に糸球体を分離し、20%ウシ胎児血清を含むPRM1640培血で培養した。メサンギウム細胞は3〜4週後にフラスコ底面に増殖した。メサンギウム細胞であることの同定は電顕、第8因子非染色性より行った。この系を利用して腎炎惹起物質の検討を行った。惹起物質として血小板と単球由来の物質の可能性を考え、血小板破壊液、単球培養液上清を継代メサンギウム細胞培養液に加えた。血小板破壊液を加えると培養7日目で細胞数倍加に有意の差か認められた。単球培養液上清添加では48時間ですでに細胞数が有意に増加していた。この成績はこれらの因子が糸球体増殖に関与していることを示している。 2.メサンギウム細胞内イオン組成の同定は微小2連式イオン選択性電極を用いた。哺乳類の腎の細胞は小さいので電極法が応用可能かどうかを明らかにするため、他の腎細胞、すなわち尿細管上皮細胞において基礎的検討を行った。この結果近位尿細管上皮細胞において細胞内H、Na、K、Clの各イオン濃度が測定可能であることがわかった。この基礎検討の過程でいくつかの興味ある知見が得られた。【○!1】近位尿細管細胞の血管側膜にK-Cl共輸送が存在する、【○!2】同部にNaHCO_3/Clの交換輸送が存在する、【○!3】近位尿細管でのCl輸送は能動輸送である。これらの成果は各々論文として発表した。この電極を培養メサンギウム細胞へ適応した、電極先端のサイズ、形状を色々と変化させて細胞内への刺入を試みたが安定した測定には至らなかった。最大の原因は電極刺入によりメサンギウム細胞が収縮し、細胞膜の障害が大となる点である。現在他のテクニック、つまり細胞内蛍光色素法により細胞内イオン濃度の測定を試みている。
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