研究概要 |
今年度, 全身性エリテマトーデス(SLE)患者の活性化T細胞におけるIL-2レセプター(IL-2R)発現異常の研究を行い以下の結果を得た. I.SLE患者PHA刺激末梢リンパ球のIL-2産生能をヒトIL-2性依存T細胞株(Sez627)を用いて調べ, 活動期SLE患者におけるIL-2産生障害を明らかにした. II.PHA刺激リンパ球の外来性IL-2に対する反応性は, SLE患者においてその活動性を問わず, 正常人より有意に低下していた. III.抗IL-2R抗体である抗Tac抗体を用いてPHA刺激リンパ球のIL-2R発現を調べた. SLE患者活性化リンパ球は, Tac抗原発現率も細胞当りの発現数(エピトープ数)も, 正常人と同程度であった. IV.^<125>I-標識IL-2を用い発現したIL-2Rの数や親和性を調べた. SLE患者の活性化T細胞でも高親和性と低親和性の二種のIL-2Rが発現していたが, 生物学的に重要と考えられる高親和性IL-2Rの発現数が正常人に比し有意に減少していた. V.SLE患者の高親和性IL-2R発現異常は, 正常人単球やIL-2やIL-1の添加により部分的に回復したが, 正常人レベルには至らなかった. 以上の結果をまとめると, SLE患者活性化T細胞に発現するIL-2RはTacエピトープ数は正常であるがIL-2に対する高親和性レセプターの発現障害を認め, その異常は本来的にT細胞に存在することを明示した. 近年, 高親和性IL-2RはTac分子とそれ以外の分子(75K蛋白)より構成されることが明らかとなってきた. 我々の結果は, SLE患者のリンパ球におけるこの75K蛋白の発現機構の異常を示唆するものであり, 今後この面よりの検討を行いたい.
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