OK細胞は副甲状腺ホルモン(PTH)に感受性を持ち、PTHの細胞への作用機構を検討するのに適した培養細胞系である。細胞は米国国立衛生研究所のJ.S.Handler博士より供与をうけ、当研究施設においても10%FCS添加DMEM培地にて約7日間でconfluentの状態が得られる安定した培養条件を確立した。OK細胞におけるリン輸送は20分間まで直線的な取り込み増加がみられることより、以下の検討では3分値あるいは5分値を用いデ-タ解析を行なった。PTHによるリン輸送抑制は10^<-9>M添加以上で認められ、濃度依存性に抑制が強まった。近年10^<-11>〜10^<-9>Mの低濃度PTH添加時に、従来より知られているA-kinaseでなくc-kinase系が活性化され、リン輸送のmodulationを行なうとの報告がある。そこで、直接にc-kinase活性化をおこすTPAを添加し、リン輸送への影響を検討したが、我々の用いた系においては一定の成績が得られなかった。PTHによるリン輸送抑制作用がIBM×10^<-3>M添加により増強され、IBM×単独添加でもリン輸送抑制がみられたことより、OK細胞でのリン輸送調節にはcAMP産生以降の機構が大きな役割を果していることが確認された。またPTHは腎細胞に作用し、その細胞膜リン脂質含量、とりわけ酸性リン脂質のphosphatidyl inositol(PI)を増加させるとの報告がある。我々はこの点に着目し、PIを結合部位とするアミノグリコシド系抗生物質ゲンタミシンの細胞蓄積に与えるPTHの影響についても検討した。ゲンタミンの細胞蓄積はPTHの添加濃度依存性に増加し、dibutyryl cAMPのみを添加した際にも同様の効果が再現された。PTH receptorを有さない腎培養細胞系のLLCーPKI細胞ではPTHによるかかる作用は認められなかった。さらに、この作用はcycloheximide添加により抑制されることより、何らかの蛋白合成が介在している可能性が示唆された。
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