研究概要 |
全身性硬化症(以下PSS)の線維症の発症におけるサイトカインの役割を培養系を用いて検索し, 以下の成績を得た. 1.PSS患者及び正常人末梢血からペトリディッシュ付着細胞(単球rich)を分離し, 5×10^5/ml, LPS(20μg/ml)添加で24〜48時間培養し, その上清をモノカインとした. 2.PSS及び正常人皮膚より得た線維芽細胞を96穴平底プレート(Falcon 3072)に単層培養し, その増殖をSchmidtに準じ^3H-thynidineの取りこみで測定した. PSSのモノカインを添加すると正常人のそれと比べ高い増殖が認められた. 一方, 線維芽細胞の増殖性はPSSと正常人の線維芽細胞で差異がみられなかった. 3.線維芽細胞のコラーゲン分泌は^3H-prolineを添加して培養後, 培養液を透析し, collagenaseで分離してcollagenase感受性蛋白として測定した. 正常人モノカインを10%添加すると, 正常人線維芽細胞でコラーゲン分泌を10〜62%(平均40%)抑制し, PSS線維芽細胞では23〜61%(平均47%)抑制した. 一方, PSSモノカインのコラーゲン分泌抑制率は正常人線維芽細胞で0〜35%(平均20%), PSS線維芽細胞で-21〜43%(平均22%)と正常人モノカインと比べ低かった. 以上の成績から, 単球培養上清には線維芽細胞の増殖を促進するモノカインと, コラーゲン分泌を抑制するものとが認められた. PSSモノカインは正常人と比べ線維芽細胞の増殖活性が高く, コラーゲン分泌抑制活性が低いことが判明した. この成績はこれらモノカインがPSSの線維症に何らかの役割をもつことを示唆した. 現在, かかるモノカインをふくむ単球培養上清をカラムクロマトグラフィーで分画し, その役割を検索することを計画している.
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