研究概要 |
〔目的〕強皮症-多発性筋炎重複症候群に見いだされる抗Ku抗体の対応抗原(70k/80kDaのDNA末端結合蛋白)の遺伝子をクローニングし, 健常人および自己免疫疾患患者におこるKu抗原遺伝子の構造を対比検討することを目的とした. 〔方法〕1.ヒト肝癌細胞mRNA由来入gt11cDNAライブラリーより, 抗Ku抗体陽性患者血清を用いて, Ku抗原蛋白をコードするcDNAクローンを分離精製した. 2.得られたcDNAの特異性は発現した融合蛋白の免疫ブロットおよび溶出ブロットで確認した. 3.cDNA塩基配列をSangerのdideoxy法で決定した. 4.健常人および膠原病患者白血球より得たDNAを種々の制限酵素で処理後, アガロースゲルで泳動, ニトロセルロース膜に転写し, ^<32>P標識cDNAとハイブリダイゼーションを行い, 遺伝子構造のPolymorphismを調べた. 〔成績〕1.10^6個のライブラリークローンより3個の陽性クローン(K14, K68, K71)を得た. K14とK68は70kDa, K71は80kDa-Ku蛋白をコードすることを確認した. 2.K71-cDNAは80kDa蛋白のC末端側186個のアミノ酸と395bpの3′-non coding regionより構成されることを証明した. 3.HeLa mRNAのNorthern blotにより, K68は2.6kb, K71は2.8kbと3.2kbのmRNAと結合した. 4.制限酵素処理白血球DNAのSouthern blotでは, K68は5-6種のDNAバンドと, K71は3-4種のDNAバンドと結合した. Hind III処理DNAのK71-cDNAとのハイブリダイゼーションで出現した3.2kb-DNAバンドは一部の健常人および膠原病患者には認められず, 80kDa-Ku蛋白遺伝子の多様性が推察された. 〔結論〕1.自己抗原Ku蛋白をコードするcDNAのクローニングに成功した. 2.このcDNAを用いて遺伝子構造を検討したところ, Ku抗原蛋白は数数個の遺伝子にコードされ, また少なくとも80kDa蛋白の遺伝的多様性が示唆された.
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