研究概要 |
本年度は初年度のため, まずIgA腎症27例, その他の腎炎20例, 健常人15名について検討し, 下記の結果を得た. 1.IgA腎症患者の血中にはT_<α4>細胞が有意に増加している. 2.T_<α4>細胞の数はinvitroでのIgA産生能と有意に相関する. 3.T_<α4>細胞1個当りのIgA特異的スイッチ作用には, 患者および健常成人間で有意差は認められない. これらの成果の一部は, 昨年度内に発行された2冊の分担執筆図書に発表し, さらに昨年7月ロンドンで行われた第10回国際腎臓学会の一般演題IgA腎症部門で口頭発表を行った. 引続き国際誌への投稿も行っているが, 報告書作成の現時点では採否が明らかでないために, 裏面には記載していない. 上記の結果を得た後に, IgA腎症患者とその家族についての検討を開始し, 現時点で12家系の解析を終了した. その結果家族の一部にも末梢血中のT_<α4>細胞の増加およびinvivoとinvitroでのIgA産生亢進を認め, この細胞増加に家族性がみられることを確認した. この成果は来月(昭和63年3月)米国ワシントンで行われるIgA腎症国際シンポジウムで発表の予定である(Amer.J.Kidney Diseoseにて発表予定). 現在なお症例数, 家族数の増加を図っており, 当初の研究計画に基いて本症の成因解明に努める予定である.
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