研究概要 |
HGPRT欠損症, 痛風及び精神神経症状を呈するX染色体性の遺伝性疾患である. 我々はすでにHGPRT完全欠損症について, その保菌者を確実に診断する方法を開発している. しかし, HGPRT部分欠損症については, いまだ確実に保菌者を診断できる方法はない. 我々は, すでに判明している人間のHGPRT酵素のアミノ酸配列のうち, PRPP結合部位と思われる配列を人口合成した. その, 15アミノ酸からなるペプチドをBSA及びKLHに結合させ, 家兎で免疫して抗体を得た. この抗体は, もちろんのこと, この15アミノ酸よりなるペプチドと結合した. さらに, この抗体がHGPRT酵素を確認できるか否かを検討した. まず, 正常, 及び, HGPRT完全欠損症のB cell line より細胞抽出液を作製した. これらをSDS-PAG電気泳動にかけ, ゲルから電気転写により蛋白質をニトロセルロース膜に移した. その後でニトロセルロース膜を, 抗体によって染色した. 正常のB cell extractはバンドを示したが, HGPRT完全欠損症のB cell extractはバンドを示さなかった. 従って, この抗体は確かにHGPRTを検出できる抗体である. これにより, 細胞抽出液中のHGPRTを蛋白質として検出できるようになった. さらに, 我々はB cell lineをb-thioguanine, δ-azaguanineなどのguanine類似体と培養することにより, 機能的なHGPRTを測定することができるようになった. 以上のような方法が, 保菌者の診断に有効であると考えられるが, HGPRT部分欠損症については, いまだ完全に診断できるまでには至っていない.
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