研究概要 |
消化器癌局所における制癌機構の免疫そしく学的解析が可能な症例は少なかった. これは, 癌組織の免疫担当細胞浸潤部位を生検により的確に採取することが必ずしも容易ではないこと, 抗HLA-DR抗体による癌組織の免疫組織化学染色においては, 癌細胞と浸潤免疫担当細胞の染め分けが困難であること等によるものであった. しかし, 抗インターフェロンーγ(IFN-γ)抗体を用いた免疫組織学的検索により, 癌組織内にINF-γ陽性細胞を散在的に認めた症例もあり, 抗サイトカイン抗体を用いた免疫組織学的検索による癌局所における免疫反応の解析の可能性が示唆された. サイトカイン投与の影響, 硬化等の検討では, 大腸癌, 胃癌, 肝癌等の消化器患者を含む悪性腫瘍患者で, IFN-γの静注により末梢血の全リンパ球比率, HLA-DR^+, CD8^+・HLA-DR^+, CD8^+・CD11^-, Leu7^+, およびCD16^+リンパ球比率の上昇を認めた. 癌性腹水を伴う消化器癌患者に対するIFN-βの腹腔内投与では, 腹水中のHLA-DR^+リンパ球比率の上昇を認めた. これらは, IFNの投与によるT細胞あるいはNK(natural killer)細胞の活性化・動員を示すものと考えられた. In vitroでは, γIFN-γ添加培養により末梢血リンパ球のHLA-DR^+およびLeu7^+リンパ球比率の上昇を認めた他, 抗IFN-γ抗体を用いた検討等により, リンパ球の活性化・増殖には, IL-2(インターロイキンー2)とIFN-γの協同作用にるCD25(IL-2レセプター)およびHLA-DRの発現の増強が関与していることが示唆された. 癌化学療法施行下の免疫学的制癌機構についての検討では, クロモマイシンA_310μg/kgの腹腔内投与により, BALB/cマウス腹腔内侵出細胞および脾細胞のNK活性の上昇と, 同系腫瘍に対し抗腫瘍活性を有する脾細胞の誘導を認め, 制癌剤の免疫調節作用を考慮に入れた癌免疫化学療法による消化器癌患者の治療の可能性が示唆された.
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