薬剤性肝障害が疑われた患者末梢血単核球と肝薬物代謝系により産生される同薬剤の代謝産物を反応させ、単核球の障害度を測定することにより薬剤性肝障害診断の一助となり得るか否かについて検討した。先づ代表的肝毒物質であるアセトアミノフェンを用いてAssay系を確立した後、マロチレ-トを用いて臨床応用を試みた。健常人6名の末梢血より末梢血単核球を分離後、Hepes-buffered RPMI1640で10^6/mlとしNADPH産生系の存在下にマロチレ-ト(0.04-0.2mM)、肝ミクロソ-ム分画(0.025mgたん白/ml)と反応させ(37℃、2時間)、さらにFCS加の条件で16時間培養し、培養後上清のLDH活性及びトリパンブル-法により単核球の傷害度を評価した。さらにマロチレ-トによる肝障害が強く疑われた慢性活動性肝炎患者の末梢血単核球も用いた。反応系に加えるマロチレ-ト濃度を増加させると、≦0.12mMではマロチレ-ト自体による障害性は軽微であったが、NADPH産生系が作動すると著明に増加し、代謝物の毒性への関与が強く示唆された。一方臨床的にマロチレ-トによる肝障害と考えられた症例では単核球のマロチレ-ト代謝物による障害度は正常対照の約3倍の高値を示した。マロチレ-トの代謝は主として肝でなされ、主要代謝産物としてisupropyl hydrugen Malonateなどが知られているが、どの代謝物が関与するかなど障害の詳細な機序については今後の検討を要する。生体の解毒能を肝障害と関連させて論じるためには肝細胞を用いるのが最適であるが、採取が容易な末梢血単核球を用い、薬物代謝物によるその障害度を評価することが、薬剤性肝障害診断の一助となり得ることが示唆された。他剤への応用など今後の検討に値すると思われる。
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