研究概要 |
(1):免疫電顕法によるdelta肝炎症例の検討により, 肝細胞核内のδ抗原は核内粒子(非A非B型肝炎で最初に報告された直径20〜30nmの粒子)にその活性のあることが観察され, この核内粒子がδ感染粒子の内部粒子である可能性が想定された. (2):RNAse-gold complexsを用いた酵素電顕による肝細胞内RNA局在の検討では, 核内では核小体, クロマチン領域に認められ, 一方, 肝細胞質内では粗面小胞体のリボゾームおよびポリゾームに観察された. δ肝炎症例における核内粒子の検討では, 核のクロマチン領域に直径20〜30nmの粒子様構造物が集簇して観察され, その核内粒子にもgold-particlesが観察された. 免疫電顕によるδ抗原の検討(1)により, 核内粒子がδ抗原活性をもつことが明らかにされ, さらに酵素電顕による検討(2)で, この核内粒子がさらにRNAをも構成素材としていることが明らかにされた. その結果, 核内粒子がHDVの内部粒子である可能性が強く想定された. (3):非A非B型肝炎ウイルス発見の試みは, ヒトおよびチンパンジー生検肝組織を用いて実験中である. 非A非B型肝炎感染チンパンジー肝組織を経時的に採取し, 通常電顕で観察すると核内粒子のほかに, 細胞質内管状構造物microtubular aggregateなどが認められた. これらの構造物は, いずれも非A非B型肝炎ウイルスに関連した構造物であるのか, あるいは単に肝炎に伴って二次的に出現してきたものか判断が困難であった. 現在, RNAse-gold complexes, DNAse-gold complexesを用いた酵素電顕を, この非A非B型肝炎感染チンパンジーより採取した肝組織で実施し, 上述の構造物の中でDNAあるいはRNA核酸含有の有無を検討中である. 核酸を含有した構造物がはっきりすれば, その構造物が非A非B型肝炎ウイルスに関連した構造物である可能性が大きくなる.
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