研究概要 |
ヒト肝細胞癌の染色体DNA中に, 高頻度に, ヒトB型肝炎ウイルス(Hepatitis B viriu, HBV)DNAの組み込みが証明される事実は, HBV DNAの組み込みと発癌との関連を強く示唆するものと考えられている. HBVに類似したゲノム構造を有するヘパドナウイルスに属し, 最も発癌性が高いウッドチャック肝炎ウイルス(Woodchuck hepatitis virus, WHV)による肝細胞癌発生機構の解析は, HBVによるヒト肝細胞癌発生の解析の格好のモデル系と考えられている. ウッドチャック肝細胞癌由来培養細胞株(WH257GE10)では染色体異常(36, X, -5, -13, -Y, +M1, +M2)が存在することがすでに報告されているが, 今回, WH257 GE10におけるWHV DNAの染色体上の組み込み部について, in situ hybridization法を用いて解析した. その結果, WH257GE10では, 第6染色体長腕部3-3領域(6q33)と第8染色体長腕部3-1領域(8q31)の2箇所にWHV DNAの組み込みが認められた. さらに, WHV DNAの染色体上の組み込み部位は, 解析された継代期間を通して一定であったことから, WHV DNAの組み込みがウッドチャック肝細胞癌の発生に関与し, 組み込まれたWHV DNAが癌細胞としての性質の維持に何らかの役割を果たしている可能性が推測された.
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