ウッドチャック肝細胞癌の発生とWHV DNAの組み込みとの関係を詳細に検討するため、insitu hybridization法を用いて、ウッドチャック肝細胞癌培養株(WH257GE10)についてWHV DNAの染色体上の組み込み部位を解析した。 160個のWH257GE10 metaphase plateについて観測された全銀粒子数1227のうち、第6染色体には110個(9%)、第8染色体には141個(11.5%)の銀粒子の集積が認められ、これらの銀粒子数は統計学的に有意であった。さらに第6染色体では銀粒子110個のうち55個(50%)が長腕部3ー3領域(6q33)に集積し、第8染色体では銀粒子141個のうち71個(50.4%)が長腕部3ー1領域(8q31)に集積していた。その他のサブバンド領域では、いずれも銀粒子の集積は10個以下であった。第6、第8以外の染色体では、銀粒子の有意な集積は認められず、特定のサブバンド領域への銀粒子の集積も認められなかった。なお、個々の培養細胞株についての成績でも、いずれも6q33と8q31の2箇所に銀粒子の有意な集積が認められた。 以上よりWH257GE10では、6q33と8q31の2箇所にWHV DNAの組み込みが認められ、これらの組み込み部位は解析された継代期間を通して一定であると考えられた。これらの知見から、WHV DNAの組み込みが肝細胞癌の発生に関与し、組み込まれたWHV DNAが癌細胞としての性質の維持に何らかの役割を果たしている可能性が推測された。
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