研究概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)感染者血清中にはIgA型HBC抗体が存在し, HBVキャリアでは無症候性キャリアから慢性肝炎, 肝硬変と肝障害が進展するにつれIgA型HBC抗体が高力価になることを報告してきた. IgA型HBC抗体をIgAsubclass別にまたsIgA型HBC抗体をEIAで測定法を確立し, NBVキャリア血清について測定検討した. これらのうち慢性肝障害患者の急性憎悪期と寛解期のIgA型HBC抗体を比較検討すると, 急性憎悪期のC.I.はIgA型HBC抗体14.9±6.9, IgA_1型HBC抗体18.2±7.6, IgA_2型HBC抗体6.2±5.0, sIsA型HBC抗体は6.6±5.2であり寛解期血清ではそれぞれ12.6±6.6, 15.3±6.9, 1.80±1.67, 0.67±0.73であった. 急性憎悪期血清では, 寛解期血清のC.I.と比較していずれも有意(P<0.025)に高力価を示していたが, 特にIgA_2型HBC抗体, sIgA型HBC抗体ではその差が著明であった. 急性憎悪期血清と寛解期血清をHPLCで分画後, 画分画中のIgA型HBC抗体を測定してその分子性状を検討すると, IgA型HBC抗体活性はpolymor, monomerの両型で存在し, 急性憎悪期では両型とも活性が上昇したが, 特にpolymeric formの上昇が強く認められた. 次に胆汁中のIgA型HBC抗体を測定した. IgA型HBC抗体濃度は血清に比べて低値であるが, その分子性状はpolymerが主体でありそれは血清中に比べて有意に高率であった. (1.76±0.63vs0.87±0.30:P(0.01)またsIgA型HBC抗体のtotal IgA型HBC抗体に対する比率は, 血清に比べて胆汁中では有意に高率であった. 胆汁中にはsIgA型HBC抗体以外のpolymeric IgA型HBC抗体も存在しIgA型HBC抗体の肝臓より胆汁への輸送機構は, SC-mediated transport以外の輸送機構があることが示唆された.
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