研究概要 |
消化管におけるペプチド生合成機序に関してDNAレベルおよびペプチドレベルの研究に多くの進歩がみられるが, これら両者をつなぐmRNAの発現機構に関する研究はみあたらない. われわれはガストリン, CCKのmRNA発現状況を組織, ひいては細胞内で検討するため以下の実験をおこなった. 〔対象と方法〕1.プローブの調整-ヒトガストリンCDNA, ヒトCCKDNAをもつプラスミドクローンからそれぞれ適当な断片を切り出し, 化学修飾を施した後, フォトビオチンを用いて, これらDNAにビオチンを標識した. なお両ペプチドは遺伝子上bomologyを有するが, この部を含まないプローブも作製した. 2.in situ hybridization-内視鏡により得たヒト胃, 十二指腸粘膜組織を上記プローブとhybridizeさせた後, ビオチンに対する一次抗体および二次抗体を結合させ, 蛍光色素で標識した三次抗体を用いて組織中のmRNAの検出を行った. 3.ペプチド染色-ガストリン・CCK特異抗血清による酵素抗体法でペプチド染色し, 産生細胞の異同を確認した. 〔結果〕胃幽門腺においてガストリンmRNAを染色すると, 核の部分が丸くぬけ, 細胞質にmRNAが明瞭に検出された. 連続切片によりG細胞と同定できた. 十二指腸粘膜組織においてもCCK・mRNAを明らかに検出しえた. またG細胞においてCCK・mRNAが染色性を有する結果を得ているが, これについてはなお検討中である. 〔考案と今後の展望〕非アイソトープによる組織内mRNA染色を抜術的に可能にすると共に, ペプチド産生細胞のペプチドとmRNAの二重染色によりmRNAの発現をさらに組織レベルで検討の予定である. またヒト脳, 脾臓についても同様の検討をおこないたい.
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