研究概要 |
肝細胞の増殖・分化機能発現は細胞膜に存在する膜蛋白質(cell surface modullator;CSM)により調節される事が報告されているので, 私達もこのCSMを各agingラット肝臓から調製し, その化学的性質, 培養肝細胞における胆汁酸動態および肝特異酵素に与える効果を検討した. その結果, 若齢および成熟ラットから調製したもののゲルロ過法による活性部分の分子量は約67万で, その活性は加熱処理(95°C, 2分間)で不活性化されると共に, Con Aおよびulex agglutin Iによく吸着する. 一方, 老齢ラットからのCSMは分子量約80万で, wheat germ agglutininによく吸着することから, 両者には糖鎖の差異が認められる. 今後, これらの膜蛋白質を精製し, その性質をより明らかにしたいと考えている. また, CSM添加後の低細胞密度の培養細胞では, デキサメサゾンによるTAT誘導能は認められるものの, プロトポルフィリンおよびδ-アミノレブリン酸によるCP-450の誘導は認められず, Na+, K+-ATPase活性の上昇は16〜24時間のlag timeの後に認められ, その酵素誘導はシンクロヘキシミドにより阻害されるので蛋白質合成を介して行われ, おそらく遺伝子の転写促進による事が考えられる. 従って, 毛細胆管を形成する機能蛋白質の遺伝子群は肝細胞同士の接着によってその発現がコントロールされていると考えられる. 実際, 低細胞密度で培養した肝細胞からの毛細胆管形成は遅いが, デキサメサゾンで前処理したりCSM添加により, その形成促進あるいは機能発現が胆汁酸動態から推察される. 従って, 低細胞密度の培養細胞では, 肝細胞間のgap junctionが消失し, 胆汁酸の様な低分子物質の細胞間移行や電気的共役等のcell-cell cominucationがなくなるものと考えられる. また, 癌原物質投与により不定期DNA合成の亢進が確認されたので低細胞密度で培養した細胞に, これら癌原物質を投与して前癌化モデル作成を現在検討中である.
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