研究概要 |
我々は既に肝細胞癌患者では肝細胞癌の組織中では赤色螢光がみられること, 肝硬変患者に比べて尿中へのポルフィリン体排泄が増加していることなどから特殊なポルフィリン代謝異常がみられることを報告してきた. 今年は肝細胞癌における治療として施行されている肝動脈塞栓術(TAE)前後における尿中コプロポルフィリン異性体I型及びIII型の変動を観察した. TAEを行うと術直後より血清酵素であるGOT,GPT,LDHなどが上昇し肝細胞壊死を反映するが尿中コプロポルフィリンはTAE後3ー5日目で上昇し, その場合コプロポルフィリンIII型が主体を占めた. 急性肝炎におけるピーク時で調べるとコプロポルフィリンはI型及びIII型が同レベルで増加しており明らかな差異を示した. これらの結果から肝細胞癌におけるTAE時のコプロポルフィリンIII型の増加は正常肝組織の壊死とは明らかに異なっていて肝細胞癌特有な所見と考えている. 以上の結果をさらに確認するために現在肝細胞癌組織中ポルフィリン体と悲癌部分のポルフィリン体を分析し比較検討している(日本肝臓学会総会, 1988報告予定). 肝細胞癌にヘマトポルフィリンを投与すると日光過敏症や皮膚色素沈着が発生することが明らかに成ったが, 人体に投与されたヘマトポルフィリン誘導体は各種のポルフィリン体の混合物であるためその主力ポルフィリンを決定する必要である. 今回我々はPHYTOPHILIN I及びIIIを人体に投与して尿中への各種ポルフィリン体の排泄と肝細胞癌及び肝硬変部分へのポルフィリン体の沈着を検討する予定である.
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