肝細胞癌とポルフィリン代謝異常に関する研究はほとんど行なわれていない。従来、われわれは肝細胞癌では肝硬変に比べて特殊な代謝異常が成立しているという観点から報告を行ってきた。即ち(1)肝細胞癌で、暗所で紫外線照射をおこなうと赤色部分が存在し、ポルフィリンの存在を示唆すること。(2)尿中ポルフィリン体およびその前駆物質を測定し、肝硬変と比べると、PBGおよびALAでは差をみとめないが尿中コプロボルフィリン(CP)とウロボルフィリン(UP)は有意に肝細胞癌では増加して尿中に排泄されること(Biochem Med 1984)を報告した。 今年度はCPIおよびCPIIIの異性体が肝硬変と肝細胞癌では正常対照者に比べてどう異っているか。又、肝硬変と肝細胞癌でCP異性体の差があるか否かについてしらべた。 結果(1)正常対照人では、CP異性体比はIII型優位で55%、Iでは45%であった。 (2)肝細胞癌、肝硬変ではCP総排泄量は正常対照人では有意差をもって増加するが、その場合CPIおよびCPIII型が相伴って増加し、CPI型の増加が主体であった。 (3)肝細胞癌と肝硬変を比べると、肝細胞癌の方で量的に有意に総CPが排泄されるが、肝硬変とは質的な差はみられなかった。 結語 肝細胞癌のCP尿中排泄は、肝硬変に比べて量的に有意に増加するが、質的な差はみられなかった。
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