研究概要 |
ラット脳幹のアンモニア濃度が血液より数倍高く, 同領域のシナプトソーム・ミトコンドリア分画のグルタミナーゼ活性を抑制する可能性を示唆する成績を得たので, 本研究を企画した. 昭和62年度の研究計画では, ラット脳幹(延髄と橋)からシナプトソーム・ミトコンドリア分画を採取し, 神経伝達アミノ酸(GABA, GIUなど)の供給に最も重要なグルタミナーゼ活性を測定し, アンモニアによる阻害作用があるか否かを明らかにすることを目的とした. 脳幹シナプトソーム・ミトコンドリア分画はWhittakerらの方法によりおこない, その純度は電子顕微鏡により確認した. グルタミナーゼ活性に及ぼすアンモニアの影響をみるためには, 基質^<14>C-グルタミンから産生される^<14>C-グルタミン酸を分離・定量するPrusinerらの方法を検討しなければならなかった. 脳幹シナプトソーム・ミトコンドリア分画のグルタミナーゼ活性は0.1mMアンモニアイオンで, 約30%阻害がされた. 他の産物であるグルタミン酸やGABAでも同様の阻害観察された. しかし, このような阻害は, 非シテプトソーム・ミトコンドリア酵素では認められなかった. 以上の成績は, アンモニアなどによる阻害が, 神経伝達アミノ酸の供給に調節的機能を発揮しているのか, あるいはシナプトソーム内アンモニア濃度の調節弁的機能を示すものとして興味深い. 今後さらに, 肝性脳症の発現材序における意義について検討を進めなければならない. 従って, 次年度は, 急性肝不全モデルにアンモニアを負荷し, 分枝鎖アミノ酸輸液で, 本酵素活性がどのうように変化するかを検討するとともに, in vitraでプロスタグランデイン, ロイコトリエン, エンドトキシンや胆汁酸などの添加の影響について観察しなければならない.
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