研究概要 |
1.類洞内皮細胞の培養系の確立とその増殖因子:従来からの肝細胞培養で用いてきた方法によりラット肝よりレチクリン線維を調整し, 線維成分を塩酸グアニジンおよび酢酸抽出法, ペプシン消化法により可溶化後とカラムクロマト法で分画し, (a)コラーゲン(b)糖蛋白(c)ムコ多糖分画を得た(投稿中). これらをペトリディシュに塗布して培養基質とした. 類洞内皮細胞はラット肝からコラーゲナーゼ潅流法, 遠心流出法により調整して培養を行なった. その結果, 肝細胞は基質(a), (b), (c)でそれぞれ単層, 多層, 球状の細胞凝集を示したが, 類洞内皮細胞はムコ多糖上では生着せず, コラーゲンおよび糖蛋白基質上でいずれも単層を形成した. 単層中の類洞内皮細胞は培養2日までに胞体に篩板を認めた. また放射標識チミジンの取り込みと形態観察から類洞内皮細胞は増殖することが明らかとなった. 2.類洞内皮細胞と肝実質細胞間の相互作用:両細胞は相互作用を示し, 肝細胞単独で形成される細胞凝集(3編投稿中)と同様か又はやや楕円棒状の細胞凝集が形成され, 類洞内皮細胞は凝集塊の表面を覆うように位置していた. さらに肝細胞単独で構成される細胞凝集では形成の乏しかった細胆管様構造物が多数形成されることが判明した(投稿準備中). 以上より肝細胞, 類洞内皮細胞, 細胞間質物質成分との間でそれぞれ相互作用が存在し, その相互作用により肝組織類似の組織構築が誘導されるという興味深い発見が得られた. この実験系は正常成熟動物細胞の組織構築誘導モデルとして利用できる可能性を有しており, 今後の発展にさらに努力した.
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