研究概要 |
香川医科大学第3内科に入院した非A非B型肝炎21例について透過型電子顕微鏡により肝組織を観察し, 非A非B型肝炎に特徴的なウィルス様粒子や超微形態が存在するかどうか検討した. 対象は輸血後急性肝炎2例, 慢性肝炎非活動型2例, 慢性肝炎活動型17例であり, 活動型の症例のうちステロイドを使用中の症例は2例である. 成績:種々の炎症細胞が肝細胞と接触し, ミトコンドリアの変形腫大, ミトコンドリア内Paracristalloidの存在などの肝細胞の変性像や, 壊死像, 胆汁うっ滞や線維化がみられた. 肝炎に伴なう一般的な変化の他に以下の所見が観察された. 肝細胞核内変化:4例の慢性肝炎活動型症例に20〜27nmの電子密度の高い粒子が集族して認められた. 慢性肝炎活動型の1例ではKnpffer細胞核内にも同様な粒子の集族を認めた. 核内粒子は, 非A非B型肝炎に特徴的とは考えられていないが, まだ解明されていない核内構造物である. 胞体内変化;慢性肝炎活動型の1例においてKupffer細胞胞体内のライソゾームと考えられる構造物の中に直径11nmの結晶様配列をしたウィルス様粒子を認めた. この結晶は, 4列に並んだ18個の粒子であり, 極めて小さいが規則性を持って結晶様に配列していた. 肝細胞の胞体内には特徴的な所見は見られなかった. ステロイド使用中の非A非B型肝炎症例には電子顕微鏡的に特徴的な所見はみられなかった. チンパンジーを用いた非A非B型肝炎感染実験で見出された肝細胞体内管状構造物やcurved membrane構造物, microtubuiar様構造物は, 今回検索されたヒト症例には見出すことが出来なかった.
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