本年度の研究においては、昨年度確立した方法を用いて作製した〔^3H〕標識プロアポA-Iを基質としてプロアポA-I転換酵素(PAC)活性測定法を確立し、各種肝疾患および高脂血症患者血清中のPAC活性を測定した。標識プロアポA-Iを基質とし検体血清とインキュベーションを行い、反応停止にはTCAを加えた。TCA沈澱上清の放射活性のEDTA非存在とEDTA存在との差を、PAC活性とし、dpm/24h/ml serumで表現した。抗体血清とのインキュベーションを4℃で行うと活性は1/3に低下し、56℃、60分間処理を行った血清では全く反応は起こらないことからプロアポA-I転換反応はプロテアーゼによることが示唆され、DTT、EDTAにより阻害され、PMSFの影響を受けないことから、S-S結合を持つ金属プロテアーゼであることが示唆された。TCAassay法を用いて健常者。肝硬変患者および高脂血症患者血清におけるPAC活性を測定した。本活性は血清におけるプロアポA-Iの割合と有意の負の相関を、またアポA-Iおよびトリクリセリドとは正の相関を認めたが、コレステロールおよびHDL-コレステロールとは有意の相関を認めなかった。健常者血清におけるPAC活性は7567±773dpm/24h/ml serumであるのに対し、肝硬変患者血清では3352±1271と有意に低下していた。一方、高トリグリセリド血症患者血清では10530±3157と有意の上昇を認め、さらに検討すると7641±794と健常者と有意差のない群、13420±605と約2倍に活性が上昇している群の二群に分けることができた。活性が上昇していない高トリグリセリド血症患者群は主にアルコール多飲者であり、上昇群には肥満が認められた。今回、血清のPAC活性がTCA assay法により測定できることを示し、肝硬変患者血清においては本酵素活性が低下、また高トリグリセリド血症患者の一部では逆に活性が上昇していることを示した。さらに、肝細胞培養液中にも本活性が存在していることを示した。
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