研究概要 |
胃癌患者11例(男4例・女7例、年齢は34歳から69歳)の癌性体腔液を用いて染色体分析を行った。胃癌の肉眼型はIIc+III進行癌2例、Borr.2 1例、Borr.3 1例、Borr.4 7例であった。病理組織診断はtubular adenocarcinoma 1例、poorly differentiated adenocarcinoma 6例、signet-ring cell carcinoma 1例で、残る3例ては組織診断が得られなかった。染色体分析に用いた材料は腹水10例、胸水1例で、細胞診では10例がClass V、adenocarcinoma、1例はclass IIIであった。染色体分析は、癌性胸水・腹水を遠沈し、buffy coatを15%FCSを含むRPMI1640培地で2時間から24時間培養し、型のごとく染色体標本を作製、分析した。染色体数のモ-ドは2倍体3例(2例は正常核型)、高2倍体4例、高3倍体2例、低4倍体1例で、残る1例はモ-ドが決められなかった。全例に染色体異常がみられたが、10例では核型を決めることができた。1例では2倍体細胞の核型は正常で5〜6N域に多倍体の異常細胞が存在したが、その核型は決定できなかった。また、他の1例の2倍体細胞は正常核型であったが、高2倍体にクロ-ンも持つ別のcell lineがみられ、その核型は47,XY,+marであった。染色体の数的異常としては+7が5例、+2,+13,+20が4例、+5,+6,+8,+10,+11,+16,+18,+21,+22が3例にみられた。構造異常ではX,#1,#3,#5,#6,#12,#17染色体などに複数例に異常がみられたが、特にXq-,3q-,5q-,6q-などの異常や、1p36,9p21-24,12q12-13,17cen-p11.2などのバンドを含む構造異常が複数例にみとめられた。
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